導電性高分子ソフトアクチュエータ(人工筋肉)の開発

導電性高分子薄膜は,イオンの脱注入により体積変化を起こす電解伸縮特性を有していることから「分子マシン」と呼ばれ,この電界伸縮により,伸縮,曲げ,ねじれ運動するソフトアクチュエータとしての応用が期待されている.薄膜,軽量でありながら,低電圧(<1.0V)でしなやかに変形し,水中,空気中,特殊溶液中(2.0<pH<8.0)で駆動し,その単位面積当たりの力は,人間の筋肉の100倍以上である新機能性材料としても知られている.これまでに,微小流体を送液するマイクロポンプ,さらには,目標値(mmオーダー)に瞬間的に移動し,振動することなく維持するオートフォーカスデバイスの開発に成功した.その一方で,工学的応用を考えると,その変形量,応答性および耐久性が十分でないことも明らかになった.そのため,アニオン(陰イオン)およびカチオン(陽イオン)駆動層を接合したバイモルフ構造の導電性高分子薄膜を開発し,酸化および還元時に,両層が同時に逆方向の電解伸縮を起こすことで,変形量が飛躍的に上昇することを明らかにし,続いて,電気化学的アプローチにより,その劣化を抑制し,高耐久性の実現が可能となった.残された課題は,応答性の改善であり,この解決こそが,さらなる工学的応用技術への展開の鍵となる.本研究では,電解伸縮機能を十分に発揮できるアニオンおよびカチオン駆動層の最適化設計を確立し,大変形,高応答,高耐久性を実現するソフトアクチュエータの創製,さらには,工学的応用に向けた実用化を目指している.